技術教室コーナー第3号

★★【JICA(国際協力機構)−日本が進める環境開発支援策と実施状況】★★


 1992年6月にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(UNCED)を契機に国際社会において環境問題は大きなテーマになってきました。日本政府も環境協力への積極的な取り組みを見せ、まず、UNCEDにおいて「92年から5年間で9,000億円から1兆円を目途として環境ODAを拡充・強化する」という声明を発表しました。そして目標の4割以上を上回る約1兆4,400億円(約133億ドル)をこの5年間で達成することができました。

 UNCEDから5年目にあたる97年6月には国連環境開発特別総会がニューヨークで開かれましたが、ここで橋本総理(当時)は今後のODAを中心とする日本の環境協力政策を包括的にとりまとめた「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD構想)」の推進を宣言しました。ISD構想では(1)大気汚染、水質汚濁、廃棄物対策、(2)地球温暖化、(3)水問題、(4)自然環境保全、(5)環境意識向上の5つの分野での行動計画を示しています。ここで具体的に取り上げられているのは、「東アジア酸性雨モニタリング・ネットワーク」の提唱、環境研究・研修センターを通じた途上国の環境管理のための組織体制の強化、「インドネシア生物多様性保全センター」や「国際サンゴ礁センター建設計画」を拠点とした情報や保全・研究のネットワーク化などです。

 同じく97年の12月に京都で開催された「気候変動枠組み条約第3回締約国会議(COP3)」において、議長国である日本は「京都イニシアティブ」を発表しました。これは、ODAを中心とした途上国の温暖化対策支援を強化するための諸施策を示したものです。日本としては温暖化問題に対する協力の施策として、(1)大気汚染、廃棄物、省エネルギー、森林の保全・造成の4つの関連分野における人造り協力、(2)温暖化対策を目的とした協力に対する円借款の活用促進のための優遇条件の適用、(3)日本の技術・経験の活用の3点を打ち出しました。

 また、99年8月に発表した向こう5年程度のわが国ODAの実施基本方針となる「政府開発援助に関する中期政策」の中でも、環境保全を重点課題の一つとして掲げ、特に環境協力に関してはISDの基本理念及び行動計画、京都イニシアティブの積極的な推進、援助の実施に際する環境配慮の強化が述べられています。

 このように日本政府はODAによる環境協力の推進に努めていますが、その実施においてJICAは重要な役割を担っています。


プロジェクト紹介
China
日中友好環境保全センター
(フェーズI:1992年9月〜1995年8月、フェーズII:1996年2月〜2001年1月) プロジェクト方式技術協力

中国では近年の急速な経済成長とともに、環境問題がより深刻化しており、この問題の解決には同国の対処能力の向上が重要であると判断したわが国は、無償資金協力により日中友好環境保全センターの建設および機材の供与を実施するとともに、同センターにおいて基礎技術の移転を目的としたプロジェクト方式技術協力(フェーズI)を実施してきました。現在実施中のフェーズIIはフェーズIでの成果をもとに展開されており、環境分野の科学技術および政策に関する基礎研究、観測手法の開発から人材育成、環境教育と啓蒙を内容としています。個別の活動内容は、中国の環境政策の動向を踏まえて計画されており、その成果は中国の環境行政に着実に反映されています。


Latvia
ラトヴィア ルバナ湿地帯総合管理計画調査
(1999年7月〜2000年12月)開発調査

ラトヴィア最大の湖ルバナ湖を中心に広がるルバナ湿地帯(約78,000ha)の重要性は、湖水、氾濫原草地、農耕地、各種森林といったビオトープ(小規模生態系)がモザイク状に分布し、各ビオトープにそれぞれ特異的な生物種が生息する生物多様性の高さにあります。特に鳥類の種類・個体数の多さは欧州地域でも特筆すべきものです。しかしながら、この湿地帯の環境保全に必要な管理計画が未だ策定されていないため、地域振興の観点にも配慮し、かつ同地域の生物多様性の保全と持続的な資源の利用を目指した環境管理計画を策定するための開発調査を実施することになりました。

調査のスコープとしては、地域開発計画の指針、土地利用計画、水管理政策およびエコツーリズムの可能性検討等、環境管理計画の策定を目的としています。


Niger
ニジェール カレゴロ緑の推進協力プロジェクト
(1993年1月〜2001年6月)青年海外協力隊

このプロジェクトは、砂漠化が進んでいる対象地域において、植林などを通じ、緑の推進を地域住民と共同で行う、住民参加型協力の一例です。

常時約10名程度の青年海外協力隊員が植林用の苗木生産(年間約6万本)に携わるとともに、野菜栽培、果樹栽培の苗木生産を組み合わせたアグロフォレストリーの普及に取り組み、資源利用と資源保護を同時に目指しています。また、薪炭材としての木材の需要の抑制のため、村落開発の隊員による改良かまどの普及活動も行われています。これらの活動が有機的に連携して実施されることで、同プロジェクトは砂漠化の進行を食い止めることに加えて、地域の持続的な社会経済の発展を促すものとなっています。


Bulgaria
ブルガリア 省エネルギーセンター
(1995年11月〜2000年10月)プロジェクト方式技術協力

ブルガリアでは、コメコン体制の崩壊によって1990年以来エネルギー価格が急騰し、経済成長のボトルネックとなっています。このプロジェクトでは、省エネルギーセンター(EEC)の産業界に対する省エネルギー技術の指導能力と施策提言能力の向上を図ることにより、同国産業界でのエネルギー消費の改善が期待されています。

EECはエネルギーコストの削減、エネルギー消費の効率化を実際的に推進する機関であることから、これまで工場診断と改善指導コンサルティング、情報利用や広報活動などの面で専門家を派遣し、その分野での研修員を受け入れるなどの協力を実施しています。

また、ブルガリアはCOP3において温室効果ガスの排出量を8%削減することを表明しており、EECはこの点から削減目標達成に向けて貢献しています。

World
地球温暖化対策コース (1997年度より実施)
地球温暖化防止技術 (1998年度より実施)  研修員受け入れ

JICAの実施している「集団研修」においても、例えば「地球温暖化対策コース」や「地球温暖化防止技術」といった地球環境問題に対処するためのコースが設置されています。前者は、温室効果ガス目録を自ら作成しえるような技術の養成、および温暖化対策戦略の策定のために必要な情報の提供と技能の養成を目標としています。後者は、日本で地球温暖化防止技術としてすでに豊富な実績があり即効性が期待される省資源、省エネルギー技術、太陽光や風力等のクリーン・エネルギー技術や、CO2排出抑制・対策技術などへの取り組みを行っている研究機関や工場等での事例を習得することが目標です。



      
JICAが実施するその他の主な環境関連案件

グアテマラ アマティトラン地熱開発計画調査(開発調査)
パナマ 森林保全技術開発計画(プロジェクト方式技術協力)
アルゼンティン 鉱山公害防止対策研究センター(プロジェクト方式技術協力)
ハンガリー バラトン湖環境改善計画調査(開発調査)
エジプト 環境モニタリング研修センター(プロジェクト方式技術協力)
モーリタニア キファ市地下水開発計画調査(開発調査)
ジンバブエ 太陽光発電地方電化促進計画調査(開発調査)
カザフスタン アルマティ市廃棄物管理計画調査(開発調査)
ヴィエトナム ハロン湾環境管理計画調査(開発調査)
パラオ 国際サンゴ礁センター建設計画(無償資金協力)
ケニア 社会林業推進(第三国研修)
インドネシア 生物多様性保全計画(プロジェクト方式技術協力)




― JICAホームページより