技術教室コーナー第5号

★★【CO2削減、国際連携で!】★★

−地域・温暖化問題国際フォーラム− 

◆基調講演−1 米露などの協力を促進せよ!
【カルロ・キャローラ(ベネチア大学教授)】
 
20世紀に入って以降、気温上昇、降雨のパターン変化、氷で覆われた面積の減少などが顕著に起きている。特に海面は過去百年間に、平均で約24センチも上昇している。こういった気候変動を誘発しているのは、人間の活動だ。将来は、過去の観測記録を規模、速度ともに大きく上回ると考えられている。これをきちんとコントロールしなければ、手に負えないほど大規模なものになってしまう。
 一人当たりのエネルギー、資源消費量が多いのは米国、ヨーロッパ、日本などの先進国であり、当然CO2の排出量もそれに比例する。開発途上国も人口の多い中国、インドなどの排出量が増加しており、それら対立する利害を持った国々が存在する。それが国際合意を難しくしている。
 しかし、消費効率を向上させ、排出量を減らすことが最優先課題だ。それにはすべての国々が京都議定書に酸化すること。特に米国、ロシア、そして途上国に、参加すればメリットがあるという優遇措置を講じることが大切だ。
 市場原理を活用し、促進することも重要だ。コストの低いやり方の一つとして、排出権取引がある。
 技術開発も経済成長と同時に、CO2を削減できる。日本、中国など極東地域の国々が力を合わせていくことも大きな力になる。


◆基調講演−2 国民全体で費用負担を!
【浅野直人(福岡大学法学部教授・中央環境審議会地球環境部会長)】
 環境基本法に基づく現在の環境基本計画は2000年に閣議決定されたが、究極の目的が持続可能な社会を目指すところに特色がある。11の戦略プログラムを掲げた中で、地球温暖化対策は第一に位置づけられ、長期的・継続的な排出削減を目指している。
 温暖化ガス削減を国債協定として義務付けた京都議定書を批准するために2002年、地球温暖化対策推進大網を改訂したが、これは議定書が発効した後に京都議定書目標達成計画に置き換えられることになっている。大網の示す6%削減目標達成は、現状では難しい。これに加えて、森林吸収で3.9%を図るという目標もかなり厳しいと言わざるを得ない。
 部門別のCO2削減は、家庭関連で約2割、残る8割は企業や公共部門での取り組みにかかっている。私は企業だけががんばれという気はない。産業活動そのものは最終的には国民生活にすべて跳ね返ってくるものである、部門別に分けているのも、一時的にどこがまず管理可能かと便宜的に言っているに過ぎない。
 温暖化対策の費用は、言ってみれば地球の使用料のようなもの。一部の熱心な企業や国民だけがその費用を負担するのはフェアではない。国民全体が負担する、役割分担もしていく施策の確立が、何よりも重要課題と考えている。


◆ パネルディスカッション◆
パネラー:カルロ・キャローラ(ベネチア大学教授)
     桝本晃章(東電副社長・日本経済団体連合会環境安全委員会地球環境部会長)
<国民へ情報提供重要>
     渡辺浩之(豊田自動車専務取締役)
<未然防止策など強化>
     浅岡美恵(NPO気候ネットワーク代表・弁護士)
<規制措置まだ必要>
     植田和弘(京都大学大学院経済学研究科教授)<アジアの枠組み模索>
     フランク・コンベリー(ダブリン大学教授)
<排出権市場形成を>

 
「未来に引き継ごう、私達の地球環境」と題した地球温暖化問題国際フォーラムが3月5日、東京都千代田区のパレスホテルで開かれた。内閣府経済社会総合研究所が主催、日本経済の持続的成長をテーマとする国際共同研究プロジェクトの一環で、欧州など国内外の環境経済学者や産業界、市民団体代表が討議に参加した。

−−まず、地球温暖化問題に対する国民の各界各層の取り組み方について。
 桝本)産業界は政府の強制を受けずに自主的な取り組みを続けてきた。市場メカニズムを生かした取り組みであり、国の役割はそれを奨励、促進させることだと考えている。かつて、大きな不買運動を起こした実績もあるように、消費者には力があるが、欠けているのが情報だと思う。国や企業などによる国民への情報提供が、これからのキーポイントになるだろう。
 渡辺)車と含めた公害問題が1960年代から70年代にかけ表面化し、国の規制下で業界は対応したが、近年は自主的取り組みで解決を図る方向に変わってきた。これによって、後処理、対症療法から未然防止や総合的取り組みへと前進した。今後さらに高度化へと向かうだろう。二酸化炭素(CO2)削減は、車が走るときだけでなく、車の生産、燃料の製造時もすべて加え、考え直す必要がある。
 浅岡)家庭での省エネというと、テレビをみていない時は消すとか、コンセントを抜くとかいわれる。それも重要だが、省エネ性能を高めた機器をいかに選択して購入するかが大切になってくる。それが家計や環境への貢献にもつながる。こじんではできない太陽光パネルや風力発電も、市民の共同出資で作ろうという動きも広がりを見せている。CO2削減を積極的に進める企業に対し、消費者が支援していく仕組みや投資の在り方も考える必要があると痛感している。
 植田)従来の行動様式を環境に配慮したものに変えていくことが必要だという点ではだれもが一致しているが、情報をだれもが共通に持っていること自体が、そのような行動を促す基盤だと言える。
 コンベリー)車を例にとっても、CO2をできるだけ出さず、維持管理も低コストで、効率のよい機能にしていくのかといったことが重要になってくる。
 キャローラ)ヨーロッパでは、業界が自主的な行動に加えて、政府に対し、CO2排出権取引制度を導入するよう求めたりしている。市場メカニズムの導入で非常にうまくいくケースが多い。

−−温暖化対策の国際連携はどう進めるべきか。
 植田)CO2などを対象とした脱温暖化ガス技術の基礎を確立することは、一種の国際的な公共財を作り出していく側面を持っている。その実現は重要な連携課題になる。具体的に温暖化ガスを削減するにあたって、地域レベル、国レベルでの取り組みをネットワーク化することが大事だ。日本の取り組みで、3つの提案をしたい。まず、国内の地域社会での削減モデルを成功させること。並行して技術革新の推進。この2つを踏まえつつ、アジアレベルでの持続可能な発展を作り出していく政策的協調なり、制度的な連携の枠組みの構築だ。
 コンベリー)日本にとってCO2削減は大変コストがかかるものだが、排出権取引ができれば、目標達成に必要な負担が最も安くて済む。少数では大したマーケットにならないが、何千もの企業が参加すれば、活力にあふれた排出権取引市場が形成される。炭素税を導入した場合も、仮にコストが10%上昇した場合、一人一人が自分のエネルギー消費をどうすれば10%削減できるかしかも今の生活水準を維持できるかを真剣に考えなえればならなくなる。
 桝本)炭素税もしくは地球温暖化対策税の掛け方、タイミングによっては、日本の国際競争力に深刻な影響を与える可能性がある。炭素税の前に政府は、消費者への的確な情報提供などやることが山ほどあると言いたい。
 コンベリー)アイルランドでは、排出権取引に参加している企業は税金が免除されている。英国などでは、エネルギー効率のより企業には戻し税的な形で税が還付されている。税金と様々な政策の組み合わせで競争力の確保という問題をある程度解決できる。
 植田)日本の産業界は優れた技術力、潜在力を持ち、国民の間にも削減意欲はあるが、残念ながらそのための促進策が制度的に設けられていない。
 渡辺)持続可能な発展という場合、主語は人間だと思う。豊かな生活を気持ちよく過ごせるような社会を作ろうと。しかし、とりやすいところから税金を取るようなシステムは、そういうやる気に対し、マイナスしか生まれない。
 浅岡)私どもから見ると、規制的な措置が必要な場面はまだたくさんある。炭素税と排出権取引にしても、ヨーロッパは両者を組み合わせる中で、より柔軟に企業の努力も引き出し、市場化も達成できるよう作り上げている。ところが、日本場合、事業者は炭素税のところでまず拒否し、全部がストップしている。