2)重金属汚染土壌の浄化技術の動向
  
前田建設工業株式会社 土木本部 環境グループ部長 高橋 和夫

環境グループ部長  高橋 和夫


 今回このお話をいただいたとき、私の実際の業務が土壌汚染の調査とか対策をやっていまして、これはしめたと考えたのですが、よくよく見るとこのセミナーのどういう話をしていいのだろうと考えて、いまだにまだ頭の中が整理がつかないというような状況です。
 今日私の方でお話しさせていただくのは、重金属を主にした土壌の対策技術を考えて、その辺を資源化するためにはどうしたらいいのだろうか。そのような技術の動向について簡単にお話しさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 まず、土壌汚染とは何かということを私なりに整理してみました。新しく5月22日に成立した法案にのっとってその辺を整理して、もう一度自分の考えを整理していこうということを考えています。
 土壌汚染対策法の第2条に定義が書かれており、この中で特定有害物質を指定されています。放射性物質を除いて、鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質であって、土壌に含まれることに起因して、人の健康に係る被害を生じるおそれがあるものとして政令で定める物質。実際にはまだ政省令が出ていませんので、この辺がはっきりしてこない。
 では、今、何をもって土壌汚染というのか。これは平成11年1月、環境庁の時代に出ました「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針及び運用基準」の中に、こういうことが書かれています。「土壌の汚染に係る環境基準」のうち、検液中濃度(これはひとつの分析の仕方があるのですが)に係る項目(いわゆる溶出基準項目)と、もう1つ「地下水の水質汚濁に係る環境基準」の全項目に適用する、ということが書かれています。

 では、土壌の汚染とは何か。「土壌の汚染に係る環境基準」(平成3年8月に出されたのですが)を超過して、土壌中から有害物質が溶出する場合に、「汚染されている」という定義がなされております。同じように地下水の汚染に関しても、平成9年の段階で、有害物質が地下水中に存在する場合に、「汚染されている」といわれています。
 では、重金属とは何かということですが、「重金属等」という言い方がされています。これは下のいろんな物質が書いてあるところを見ていただくとお分かりのように、本来の重金属であるカドミウム、鉛、六価クロム、砒素、総水銀関係、それ以外に実際には有機物からできているもの、PCBとかそのほか農薬類も含まれています。こういうものをまとめて「重金属等」という言い方がされているのですが、あくまでも土壌に吸着しやすい性質があること。その結果、移動しにくく、土壌の浅い部分で濃度が高い傾向にある物質群、というまとめ方をされています。 
 もう1つ違う方法で、有機物系で揮発性有機化合物というのがございます。これの特徴は、多くの物質(下に書いてある11物質)に関しては、粘性が小さい。サラサラしているという状態です。その結果、土壌中を浸透しやすい。すぐ中に入っていってしまうような物質。さらに、ほとんどの物質が、比重が水よりも大きいために地下水の中も入っていってしまう。結局、地下水汚染を引き起こして広域の問題となることが多い物質群、というようなとらえ方がされています。
 また今回成立した土壌汚染対策法に戻るのですが、第5条では、「都道府県知事等(水濁法でいわれている都道府県知事等に相当する)は汚染区域を指定し、公示する。また、この公示に関しては、汚染の除去等によって指定事由が無くなった場合には指定を解除することが決められています。
 第7条では、現に人の健康に被害が生じ、または生ずるおそれがある場合には、汚染の除去、当該汚染の拡散防止その他必要な措置を命ずることができる。もう1つここで重要なのは、汚染の除去等の措置の実施に関する技術的基準、これは環境省令で定めるとあります。だから、今後これがはっきりと出てくるのだと思います。

 実際に、では現状どうやっているか。重金属汚染の対策技術の動向としまして、汚染が確認された場合、そのまま恒久対策に移る場合があります。恒久対策というのは、恒久という字のとおり、長い時間にわたって安全なことをしようという対策ですが、その方法としては、浄化する。浄化という言葉の定義はいろいろあるのですが、私はこのように理解してここに書かさせていただきました。汚染原因物質を分離除去する。その場で取ってしまうということが浄化であろうと。もう1つ、封じ込めという方法があります。これは、汚染原因物質を周囲環境から隔離する方法であると理解しています。
 この恒久対策を実施する前に、実際にはいろんな事由があって応急対策をとることがあります。ここでは一例として、恒久対策にすぐ着手できない場合を挙げたのですが、人の健康保護としては立入禁止措置。もう1つ、汚染の拡大防止というのがあります。汚染がどんどん拡大しては困るので、それを防止する。流出防止、これは流れ出ないように覆土等をしましょう。それともう1つ、飛散防止。ヒサンという字をわざと悲惨と書いたのですが、何らかの対応をしないと結果としてこういうことが起こるという悲惨、それも防止するのだという意味づけで、こんなことをちょっと書かさせてもらいました。 
 では、代表的な恒久対策としてはどんなものがあるかといいますと、封じ込め処理のほうは、固形化してしまう。これはセメント等の固化剤と混合して、水との接触を遮断する方法。不溶化は、化学反応等を利用して、水への溶解を防止する方法。溶融固化は、高温を加えて土壌を溶かしてしまう、その溶融体の中へ有害物質を封じ込める方法。それともう1つ、遮水・遮断というのがあるのですが、これは構造物をつくってその中に封じ込める方法というように私は理解しています。
 また、浄化処理ですが、こちらの方で使われる技術は、現状では熱処理:熱エネルギーを加えて、分離または分解してしまう方法。洗浄処理:水を加えて、汚染原因物質を洗って除去する方法。抽出処理:例えば揮発性物質であれば、圧力を下げて揮発性を高め、それで土壌中から除去するような方法。また、地下水に溶けている場合は、地下水を回収して地上で処理することができるという方法。最後になりますが、現在いろいろと使われ出しているのがこの方法で、微生物を使った処理。微生物の活動、微生物がどんどん増殖するときにいろいろと餌が要ります。その餌になるようなもの、もしくは汚染物質を餌にして微生物が繁殖するような方法をとってあげて、現実にその場所から汚染物質を分解し処理してしまうという方法が、この微生物処理に相当すると思います。

 ここで一つ問題があります。固形化とか不溶化処理、これは環境庁から出ました指針の段階ではこのように書かれています。指針では、固形化・不溶化は封じ込め処理の前処理に位置づけられています。従って、最終的には遮水または遮断構造物への封じ込めが必要になると思います。ところが現実に、重金属汚染土壌の処理対策というのは、ほとんどの場合が民間の管理型最終処分場に持っていかれています。ここで問題が出てくるのは、将来にわたって安全性が管理できるのだろうか、ということが一つあるのではないかと私は考えています。そのためには、1つは、行政が関与していただけるとありがたい。もう1つは、その物質を取ってしまうという技術がこれからどんどん出てくるのではないかと考えています。
 では、浄化処理(先ほども私なりの定義をしたのですが、土壌中から有害汚染物質を無くすこと)が行える物質としてとらえてみますと、熱分解してしまうような物質、微生物分解を受けるような物質、化学的に分解できるような物質、もう1つは蒸気として回収できるような物質、これらの物質は土壌中から取り去ることができると思います。これは矢印が右側に行ったとおり、有機系の物質であるとか、揮発性の物質であるということがいえると思います。ほとんどの場合、重金属といわれるものは無機系の物質ですから、浄化しにくいものに相当するというのが私なりの考えです。「一部物質は除く」とここに書いてございますが、これは、例えば水銀など比較的沸点の低いものは割と蒸気として回収できるという意味で書いてあります。 
 では、重金属汚染といわれたときの土壌を浄化して、ここの上に書かれているような資源化する場合どうしたらいいのだろうか、そんな技術は今どうなっているのかをこれからお話しさせていただきます。現実には、土壌洗浄法の適用事例が現在増加しています。また、加熱分離される試みがなされています。もう1つは、まだまだ日本国内では研究段階ということですが、動電現象を用いて土壌中から重金属の汚染原因物質を取ろうという試みもなされています。
 まず土壌洗浄ですが、この絵は、土壌洗浄法の効果がどこに現れるかということを模式的に表したものです。左側の汚染土壌、白丸が大きく見えるのが、ここでイメージしていますのは砂礫関係です。粒径の大きなものという意味です。そのあと、大きな丸の周りに小さな楕円形の丸がついていて、その周りに黒い丸がたくさんついています。小さな楕円形の丸はシルト・粘土粒子、細かな粒子を表しています。その粒子の周りに大体、汚染原因物質といわれているような重金属類が吸着してくる。土粒子の細かな粒子は通常、負の電荷を持っています。小さなところ、この周りに汚染原因物質がついている。土粒子自体が通常は負に帯電していますから、その周りに陽イオンである重金属類がくっついてくるということが多くなっています。そういうものを水の中に入れて解砕してあげる。細かくというか、水の中に懸濁したような状態にしてあげます。そうすると、大きな粒子の周りにはあまりついていないようなもの、細かな粒子の周りについたような状態になります。それを今度、細かなものと大きなものを分けてあげると、大きなものはきれいになるのではないか。小さなものに重金属イオン等がくっついたものは、また別途処理すればいいだろうと。いわゆるこれは全体量からみると大きく減量化できる。本来処分しなければいけないものを、小さな量として処理できるというような技術だと思います。こういう土壌洗浄法で一番大きな課題は、粒子の周りにくっついているものをどう取るかということになってくると思います。 
 これは私どもが実際研究を経て今実用化したということで、つい先日新聞発表させていただいているのですが、その技術のときのフローシートを示させてもらっています。これは模式的にフローシートとして示してありますので、この方法を使う場合、原位置では私どもちょっとできません。実際に掘って、掘ったものをまず解砕する。このとき、ドラムウオッシャー等を使って、回転体の中に土砂を入れて水を入れ、土砂を解砕してどんどん洗っていく。その後、振動篩と液体サイクロンを使って砂礫関係を回収する。この部分はきれいな土というイメージになります。さらに、まだまだ泥水状になった、細かな粒子が分散した泥水状のものを凝集沈殿設備を通して、上澄み水は基本的にこれを循環していく。
私のイメージですけれども、小さいとき八百屋さんの前へ行きますと、里芋などを樽に入れて、三またを組んでガシャガシャやって芋洗いをしているのをよく見ています。そのようにやることによって、お芋の周りについている土がよく落ちる。それをこの機械はたぶん真似たのだと思います。まだメーカーにそういうことを確認したことはありませんが。これは、なかの軸と本体のドラムの軸が変身しています。回転方向も逆になります。片やこういう回転、片やこういう回転。土砂が入ってくると、この中で一部分ここが狭まっていますので、そこにたまってきてお互いが接触するようになっています。もみ洗い状態がここでできる。その結果、非常にきれいに表面が洗えるという方法です。こういう回転のドラムウオッシャー等を使って実際に工事に入る、というのが土壌洗浄になります。

 この方法の長所ですが、大量の処理ができる。もう1つ、処理後の土砂に例えば熱を加えると、土でも熱変成します。いい例が素焼きの壺とか、素焼きの鉢です。ああいうものは 700〜 800℃からどんどんそういうのが出てくるのですが、ある程度熱を加えると粘土粒子が変質しますが、こういう方法ですと土壌の変質がない。で、清浄土としてそのまま再利用できるようになってくる。同じ砂、礫として使えるということです。
 ここでまた問題になってくるのは、この方法は粘性土が多いと非常にやりづらくなるということです。というのは、先ほどご説明しましたように、フィルタープレスで最終的に絞ったものは別途処理します。その量が増えるということは、コスト的にも高くなってくるというデメリットがございます。もう1つ、装置が非常に大きいということと、比較的大量の水を利用します。水処理も必要になります。このようなことを少し留意点として挙げさせていただいています。
 これは、実際私どもがやった−−私どもといいましても、私ども前田建設と錢高組さんと日立造船さんの3社で共同開発したものです。その実証実験をやっているときの写真なのですが、この部分がドラムウオッシャー、回転体の洗う装置です。あと、ここに液体サイクロンがついています。この下に振動篩。ここまででいろんなものを洗って分級するという設備になります。そのあと、泥水状のものが入って、それを絞るためのフィルタープレスがここに組まれています。このような装置を組んで実際の現場に持っていくということになります。これで土壌を洗って、洗った砂、礫をきれいなものとしてもう一度再利用していく。シルト・粘土部分は外部排出します。
 その効果ですが、これは実証実験をやったときの効果ですけれども、この土壌試料が原試料になります。それを相対濃度で表していますが、1という数字。5ミリ以上にどれだけついたか。これはピンク色の部分が砒素、水色の部分が鉛、黄色がカドミウム、紫色がフッ素ということで書いていますが、ピンクと紫が区別つきにくくて申し訳ありません。このように比較的粒径の大きなものには少しついていますが、75μ以下、いわゆるシルト・粘土といわれるものには大量についてくる。この部分を最終処分してあげれば、こちらの方はまた再利用できるのではないかというような技術です。
 次に加熱浄化法。これは、汚染された土壌に大量の熱エネルギーを加える方法です。熱エネルギーを加えて汚染原因物質を分解、または揮発分離させる。分解した後とか揮発分離した後のガスを処理し、きれいなガスとして大気開放をするという技術です。従ってこの方法は、処理後の土壌には、基本的には汚染原因物質が全て残らないということがいえると思います。
 このやり方としては、直接加熱法と間接加熱法という2つの方法があります。直接加熱法というのは、汚染土壌に燃焼ガスを直接接触させる。その接触のさせ方はロータリーキルンという方法を使うのですが、また後ほどフローシートでご説明します。こういう直接接触させると方法と、本来、土壌と燃焼ガスが接触しないようにして、例えばドラム缶の中に土壌を入れてドラム缶の周りから火を焚いてあげる。そのような方法をイメージしていただければよろしいのですが、そういう方法が間接加熱法としてございます。

 今お話ししました直接加熱法の、ここにロータリーキルンというものを使って、ここで火を焚いてあげる。汚染された土砂をここから入れてあげて、その熱エネルギーを受けてきれいになった土はここに出てくる。ここで発生するガス等は、排ガス処理設備を通して大気に開放するという方法です。間接加熱法というのは、ここで言っていますキルン本体はここにあるのですが、加熱するものが外側にございます。二重になっているということです。外側から加熱してあげまして、同じような熱エネルギーを加え、出てくる土砂をきれいにしてあげる。このとき発生する排ガス等は、そのあとの排ガス処理設備に通してあげる。同じようなことを言っているのですが、こちらは燃焼ガスも排ガス処理設備に入るということ、こちらは燃焼ガスは排ガスの方には入ってこないという大きな違いがございます。ということは、最終的には排ガス処理設備の設備規模を小さくすることができるということです。
 直接加熱法の長所ですが、これは加熱温度が高いという大きいメリットがあります。そのため、土壌中の有機物成分をほぼ完全に分解できる。また、水銀などの比較的沸点の低い金属や、シアンなどの有害物質も脱着できる。ただ、これは別途排ガス処理が必要になります。この前のプロジェクターの絵でお話ししましたように、短所としては、ガス処理設備が大きくなってしまうということがあります。
 間接加熱法のほうは、排ガスの処理量が小さくできるというメリットがあります。設備的に小さくできる。反対に短所としては高温加熱ができないという、基本的には高温の処理ができにくい。一般的にはまだ 400〜 500℃ぐらいであろうと私は聞いております。もう1つ、土壌が蒸し焼き状態になりますので、未燃炭素、未燃カーボンといわれるものが残りやすくて、出てくる土が黒っぽくなることもある。私どもの実験ではそのようになっています。

 これは実証実験のデータですが、方法としては直接加熱で 500℃、30分の対留である。このときに入れたものは、汚染物質としてこういうものが入っています。こういうものは浄化後にこれだけきれいになります、というようなデータです。
 加熱浄化法の適用上の課題ですが、これはあくまでも粘性土に対応する場合に課題が出てくるのだと思います。粘性土をこういう装置にそのまま入れますと、加熱中に土粒子が固まってしまう。おだんご状態になってしまう。そうすると、中からなかなか出ていきにくくなるようなことがあります。もう1つ、加熱処理によって大量の粉塵が発生します。従って、排ガス処理設備の方に負荷がかかってくるというようなことがあります。
 水銀を処理した場合、これは二次燃焼装置とか排ガスの有機系の処理は要らなくなるのですが、今度、湿式で排ガスを洗ってあげて、さらに、その中に溶け込んだ水銀をキレート処理する水処理が別途必要になってくる。シアン処理の場合、一次処理だけではまだ不十分で、二次燃焼設備も必要になってくるということが課題として残っています。これは設備をすべて組んであげればべつにどうということはないのですが、コスト的なアップにつながる要因の一つとなっています。
 これは直接加熱キルンの試験プラントの写真ですが、この部分が加熱部分です。それに対して、投入用の前処理設備と、後方にあるものはすべて排ガス処理設備になります。本体に比べると、排ガス処理設備がいかに大きくなってしまうか。いかに発生するガス量が多いか。これは加える熱エネルギーのもとになるガスがいっぱい出るからなのですが、そういうものがこういう設備を大きくしている一因になっています。

 これは3つ目の技術ですが、先ほどちょっとお話ししました動電学的な処理で、電気泳動法というものがありまして、そういうものを利用して土壌中にある重金属を取ってしまうという技術です。この技術を簡単にご説明しますと、土壌中に電極を挿入します。この電極に、ここでは直流電圧をかけてあげるのですが、こういう電場を与えてあげますと土壌中でどんな現象が起きるか。1つは、電極の周りでは土壌中にある水が電気分解を起こします。電気分解を起こした結果、陽極側では水素イオンが発生します。反対側に陰極側では水酸イオンが発生してきます。その結果、陽極側では酸性領域が広がってくる。陰極側ではアルカリ領域が広がってきます。もちろん真ん中辺は中性領域になります。
 では、酸性領域では何が起こってくるか。酸性領域中では、土粒子にくっついているようなイオン類は解離してきます。解離したこういうイオンは、反対符号の電極に向かって動き出してきます。これは電気泳動といわれたり、イオン移動というような言われ方をしております。こういう現象が出ます。
 もう1つ、電場をこういう状態で土壌中で与えてあげますと、この土壌間隙水が、通常はその土粒子が負に帯電してその周りには水があるのですが、その水自体が土粒子側に正の電荷をもって、土粒子と反対側の方に負の電荷が偏ったような状態になります。その土粒子と水界面との間でこの電場の影響が働きまして、その結果、土壌間隙水は陰極に向かって動き出します。これが電気浸透といわれる現象です。このような現象を利用して、土壌中から重金属を取ろうということです。

 今お話ししたことを今度は模式的に説明しますが、これは電場を加えると、陰極と陽極でこのように水素イオン、水酸イオンが発生します。もう1つ、電気浸透という現象で水が動く。その結果、陽極側からどんどん酸性領域が広がっていき、陰極側ではアルカリ領域が広がってくるという現象になります。陽極側で酸性になりますと、土粒子に吸着している金属イオンが解離し、イオンとなります。イオンとなったものは、このように反対符号の電極に向かって動くようになります。しかしながら、動いていきますと中性領域ではまた土粒子に吸着したりして、さらに仮に進んだとしてもアルカリ領域では水酸化物となることがあります。で、動かなくなってしまいます。
 そこで私たちは、簡単なのですが、陰極側を中和するため、酸を加えることを考えました。その結果、陰極で発生する水酸イオンは加えた酸によって中和されます。これは酸が加えられると水素イオンが出ますので、その結果、陰極で発生している水酸イオンが酸とくっついて中和され、水になってしまう。こういうことが起こりますので、その結果、全体に酸性領域が広がるようになります。酸性領域が広がれば、先ほどのお話のように土粒子にくっついていた金属イオンが解離して、そのまま陰極側まで動くようになります。

 これを実際にどのように確認したかということです。これは試験をやった結果なのですが、こういう土槽を組み、この中に電極、陽極と陰極を入れてあげる。このときに陰極、陽極の周りに水が循環できるようにしています。陰極側には酸性水を入れる。で、ここで発生する水酸イオンを中和してあげようと。これらの全てのデータを、データロガーを使って取っていったということです。ここで土壌中にある重金属がここに動いてきて、ここは酸性にしますので、そのまま酸に溶けた状態でこちらの方に入っていきます。この濃度を測ることで、この中をモニタリングしようということで実験をやりました。
 これはその実験結果の一例なのですが、何も対策しないとき、先ほどお話ししたように赤い線が土壌のpHを示しています、陽極ではpHが4ぐらいまで下がった。しかしながら陰極側は逆に10以上に高くなっている。その土壌中に鉛を入れてあったのですが、酸性になったところは減りました。これは、こちらは1に初期濃度にしてどれだけ減ったかということで相対濃度で書かさせていただきましたが、このように酸性になるところは下がる。アルカリ領域は、このpHの変化と同じような傾向をたどって逆に濃縮されてくる。こちらからこっちに動いてきたということが、これで1つ証明できると思います。

 もう1つ、その効果を、陰極の方に酸を加えたらどうなるか。pHは全体的に約3以下になりました。その結果、入れた鉛も全体的に下がりました。そのような結果になっています。これで酸を入れた効果がはっきりと表れたと思っています。
 ここからは土壌のpHの経時変化を示していますが、時間的にこれは日単位で示させていただきました。これが通電を開始して3日たった段階。ここでKPNと書かれているこちらの方は、陰極側に酸を加えていないものです。こちらの方は陰極側に酸を循環したものです。赤が強いほどpHが低いということを表しています。ここで分かりますように、陰極側には紫色っぽい色まで出ている。これは、12から13ぐらいのpHになっているということが示されています。ここが電極になります。処理を始めて3日たつと、酸を循環している方は、このようにアルカリ領域があまり出てきていない。これは測ったのが土壌表面です。なかまではまだ測っていませんので、それをご理解した上でお聞きしていただきたいのですが、あくまでも土壌表面の状況ではこういう結果になっています。
 これが4日たつと、こちらの方は相変わらずアルカリ領域がある。そして酸処理している方は、この電極の周りは相変わらず酸性領域が保たれている。さらに、この色がだんだんと濃くなっているのがはっきり出ていないのですが、本当に、pHの低い領域がだんだんと広がりつつある。こちらの方は、あまり先ほどと変わっていないという状況になっています。
 これも経時変化で5日目になっていますが、相変わらずアルカリ領域が残っている。こちらは出てきていない。酸性領域、pHの低い領域がさらに進んでいるというような状況です。

 そして6日目、10目日。10日目から11日にかけまして、酸を循環しないものはこの辺りがずっとアルカリ領域になっている。こちらは常になかった。酸を循環した方はさらに、この大きな範囲で非常に低いpHを保つことができたというようになっています。
 これはそのときの、鉛を入れて実験をやっていたのですが、鉛がどういう分布を示したかという例です。酸を循環しないものは、やはり陽極の周りは低くなったのですが、アルカリ領域で高くなってくる。さらに、こういうところでも高い領域が残ってきている。これは、先ほど見ていただいたpHの表面分布と大体同じような格好をしております。こちらの酸を循環したもの、これは陰極の周りまで大きな範囲で鉛の除去ができているということが、ここでお分かりいただけると思います。こちらの方は、この辺は一部でアルカリ領域がpHを測っていた時に出ていたところですが、ここまでは酸を加える影響範囲になっていなかったというので、たぶんこの辺はまだまだ鉛の濃度がもとに比べて高い領域、固まったような領域もあるということです。対策範囲としては、この方法を使う場合にはやはり電極の間を対策範囲と決めて電極を配置すればいいのではないか、というふうな結論を私はしております。
 何でも効くのかということですが、これは同じように実験をやったのですが、カドミウム、鉛、トータルクロムは時間の経過とともに取れています。しかしながら、砒素、水銀は時間をかけてもなかなか上向いてこない。回収率が上がってこない。確かに、わずかながらですが上がっていますので取れないとは言えませんが、非常に長時間を要するのではないか。私どもとしては、この方法ができるのはこの3つがまず最適なのではないかというように結論づけて、一応、砒素、水銀はちょっと難しいかなという結論に達しております。

 鉛は実際、実験でどうなったか。これは3つのケースを示していますが、10日間やったもの、30日間やったもの、45日間やったもの、ほぼ同じデータを取ることができましたので、再現性は十分にある。さらに、この部分に注目していただきたいのですが、約10日まではほとんど取れてこない。どのデータも取れてこない。ここで何が起こっているかということです。先ほどpHの経時変化を見ていただきましたが、あそこでもお分かりのように、表面土壌では割と早い時期から全体土壌が酸性域になるのですが、実際、中まではまだまだなっていない。全体の土壌が、pHが下がることによって急激に鉛の移動が起こってこう出てくるという結論で私どもは考えています。従って、こういう処理をする場合、最初からこの部分をなくすと、少なくとも10日間処理期間を短くすることができる。その方法としてはやはり、土壌に酸を加えたり何らかの前処理が必要なのではないか、というような考えで今おります。
 これは対策技術のまとめですが、今、「浄化」を分離または分解して土壌をきれいにすることと定義しています。そうしますと分離技術としては、実用化されているものはたぶん土壌洗浄法である。今ご説明させていただいたような技術は、動電処理の技術としてはまだ開発段階である。これが重金属を回収する技術のものでしょうと。もう1つは分解技術で加熱処理などですが、これはたぶん有機系のもの。一番多く事例があるのは油汚染だろうと思いますが、そういうものに対しての適用事例が増えている中で、あくまでも有機系のものが対象になっているのではないかというふうに考えております。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)


〔 質疑応答 〕

○質問  汚染土壌が取れたということをどうやって……
○岡田  私ども、先ほど土壌洗浄のときにグラフで示したのは、含有量という形で考えてあのグラフで書かさせていただいたのですが、初期に比べて含有量が下がっているものを「きれいになった」と。もう1つ、溶出量基準が現在の環境基準で決められていますから溶出量基準は満足していて、さらに含有量をいかに下げるか、ということで実験をやっています。
○質問  それは県が自分で検査するわけですか。都道府県がまず、これは汚染土壌だと認めるわけですね。
○岡田  はい。
○質問  そして、その汚染土壌を処理しましたというときは、また都道府県がやってきて処理したということを認めるわけですね。
○岡田  私どもでやらさせていただいているのは、最初に調査した結果を持って行政の方に報告に行きます。その段階で、汚染されているということを報告します。その後、こういう対策をとりますということで対策計画を作って、また行政の方と相談しながらその内容を進めるようにしています。実際施工して、施工の段階でいろんなモニタリングをしながらやりますが、モニタリングして、最終的には、例えば土壌を掘削して、ここから先きれいですよということを公的な分析機関に出して、そのデータを基にしてまた行政に報告する。そういう方法をとっております。
○萱嶋  それでは高橋さん、大変ありがとうございました。

当時使用したスライドはこちらをご覧下さい


 

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