9)重金属汚染土壌の大量分級浄化システムの開発状況
  
東亜建設工業(株)土木本部 技術開発部長  岡田 哲一

岡田 哲一


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 本日の発表内容として、最初に、研究開発の参考としたドイツにおける事例紹介をいたします。2番目に、本システムの開発状況、実験概要を含めて報告いたします。基本的には分級洗浄技術ですが、先ほどから何度か分級洗浄という言葉が出ていますので、どこが違うのかとお思いになる方もおられるかもしれません。基本的には「大量」というキーワードがポイントだというふうにご理解いただきたいと思います。港湾等から発生する浚渫土をイメージした場合には、かなり大量に出てくるということで、その辺を念頭に置きながら種々の開発をしております。

 まず、研究開発の参考としたドイツにおける事例です。これはハンブルク港における事例でして、当社の千葉支店の井上芳隆というのが現地を視察して資料を集めてまいりましたので、それをベースにまとめると同時に、WAVEさんが「WAVE Quarterly」という雑誌を出されているのですが、そこでもこれに関する報告文がありましたので、それも参照しながらまとめております
 これは、ハンブルク港の位置図を示しています。エルベ川が北海に流れ込んでいるのですが、チェコから流れてくるエルベ川の河口部から約 100kmほど上流側にハンブルク港、河川港がございます。基本的に、ハンブルク港では年間 約200万m3の浚渫を行っています。ハンブルク港に流入してくる汚染土のかなりの部分はチェコから流入してきているらしいのですが、ドイツとしてチェコに技術的あるいは資金的な援助等を行いながら、その流入量を最近はだいぶ低減してきているということでございます。
 これがハンブルク港で使用されている、重金属汚染土の大容量浚渫土処理システムの概観です。名前はMETHAプラント(Mechanical Dredged Material Processing Plant)と呼ばれているようです。基本的に年間 200万m3発生する浚渫土の半分、能力としては年間 最大120万m3を処理しているということです。その程度の浚渫土を分級洗浄をベースとした技術で浄化しているということです。建設されたのは1990年でして、現在の円レートに換算しますと約77億円程度でつくったということです。年間の維持管理費は、人件費を抜きますと約6億円と書かれております。

 これは、ハンブルク港の浚渫土砂の汚染状況を示したものです。砒素が大体25〜65mg/kg、鉛がマックス 220、カドミウムが16、銅が 400、水銀が22、等々となっております。ハンブルク港では主に水銀が問題視されており、こういうものを分級洗浄等で浄化しているということです。
 これは浚渫土の処理プロセスのフローを示したものですが、基本的に年間 120万m3マックス、これを1日当たりに換算しますと大体5000m3前後になると思うのですが、そういうものを洗浄処理しているということです。泥水量にすれば、体積含泥率10%とすれば5万m3とか、そんなオーダーになるのではないかと考えます。
 まず処理のプロセスとして、前処理をしまして、それからハイドロサイクロン(遠心分離機)にかけて、そこからアンダーフローとして出てくる63μmオーバーをもう一度上昇流式ソータ(アップストリームソータ)にかけて、最後に脱水ろ過して63μm以上の砂を出しています。また、ハイドロサイクロン、上昇流式ソータからオーバーフローとして出てくる細粒分を、微砂用ハイドロサイクロンとスパイラルセパレータにかけて、また20から63μmの微砂を脱水処理して抽出しています。最後に、5番のオーバーフローとして出てきた20μmアンダーを濃縮して脱水し、微細シルトとしております。

 それぞれの処理の詳細について説明いたします。
 まず、浚渫土は、はしけで運搬されてきます。水と混合した浚渫土を、浚渫ポンプで容量30万m3の集積池に投入し、ドラムフィルターによって、石やゴミなど1cm以上のものを除去しているということです。その後、堆積物をタンク内で均一に混ぜ合わせてサイクロンにポンプで送っています。
 これがハイドロサイクロンです。遠心力によって粒子の大きい砂(粒子のサイズ、通常日本では74μmですが、ここでは63μm以上)を下に、それ以下の細かい粒子は上に分けております。このサイクロンは、1つのアセンブリが8基で、計16基のものを使っているということです。このサイクロンのアンダーフローとして63μm以上が出てきています。オーバーフローとして63μm未満が出ています。
 次に、サイクロンのアンダーフローとして出てきたものをもう一度、分離の第2段階である上昇流式ソータに入れて、下から上昇流が上がってきている分級機ですが、シルトは砂より軽いため、上昇流によって分離され、ハイドロサイクロンからのシルトとともに濃縮工程に送られています。
 上昇流式ソータから出てきた63μmオーバーにつきましては、このような脱水ろ過を行いまして、「85%乾いた状態」という表現で書かれておりますけれども、ベルトコンベアで運ばれて約半分が砂として出てくるようですが、これを建設資材として使っているということです。

 次に、先ほどの大型のハイドロサイクロンからオーバーフローとして出てきたものを、微砂用のハイドロサイクロンというのを開発して使っているようです。これは、小型のもの計64基をアセンブリとして使っているものだということです。ここで20μmオーバーとアンダーに分けて、アンダーフローとして出てくる20μmオーバー63μm未満をもう一度スパイラルセパレータにかけています。このスパイラルセパレータでは石炭や植物残さなどの有機物粒子を分離して、細かいものを濃縮工程に送っています。きれいになった微砂は脱水、処理されて、20〜63μmの微砂として排出されています。現在、この有効利用方法については検討中だということです。このボリュームは約15%といわれております。

 オーバーフロー部分は濃縮工程です。
 20μm未満のものにつきましては、凝集剤を使って凝集させて脱水工程に送っているということです。
 最終的に、微細シルトを凝集させてエンドレス・フィルター・クロスで包み、徐々に圧力を高めて水を絞り出し、固形物含有量を55%にしているということです。これは6ラインから成りまして、各ラインがそれぞれ、フィルターベルトプレスと高圧のフィルタープレスを備えているということです。
この微細シルトは、ボリュームとして35%程度を占めているということで20μm未満ですので、とりあえずシルト処分場に運ばれて、そこで処分されているということです。処分場は2つありまして、それぞれ 600万m3と 800万m3ぐらいの処分場が準備されているということです。処分場の下面と上面は遮水シートで覆いまして、遮水シートの上には覆土をし、植栽を施して、緑地のような形で市民の憩いの場として将来提供していこうということのようです。また、この微細シルトにつきましては、レンガ用の材料として使用するため、現在テストプラントを建設して研究しているということです。日本では先ほどからの発表で実施されているということですが、ドイツでは今そういう研究をしているということでございます。

 次に、当社の分級装置の概要と性能確認実験について説明いたします。
 当社では、先ほどのドイツのようなイメージで、基本的に1日当たり地山処理量にして数千m3から数万m3程度分級できるような装置を開発しようということで、平成11年度より取り組んでおります。体積含泥率で考えますと、その10倍から5倍程度ですから、1日当たりの泥水処理量が数万m3とか10万m3とか、そんなオーダーになるシステムです。 

 基本的に、浚渫土から砂を取り出します。通常、シルト・粘土分が30%程度以上入っている浚渫土ですと、そのまま使うのは基本的にはなかなか難しい。現在、管中混合処理工法とか軽量混合処理工法などの改良工法がございますけれども、できればその中の砂を取り出して建設材料として使うのも一つのやり方ではないかということで、大容量の分級装置を開発しております。最大の特長としては、一基の泥水処理能力が時間当たり約3000m3でございます。先ほど来見ております例えばドイツのサイクロンなどですと、処理能力が通常 200〜 300m3/hr程度ですので、ソイルセパレータはその10〜15倍程度の能力を有するということです。含泥率20%程度としますと、時間当たり地山土量で約 600m3、1日10時間運転すれば1日6000m3の浚渫土を処理できる。あるいは、その半分に砂が入っていれば1日3000m3の砂を抽出して建設材料として使える。そういうイメージのものでございます。
 このソイルセパレータというのは、もともと米国のラバル社が開発したラバルセパレータのことでして、基本的に、水や溶液中に含まれる粒子や異物の分離、回収、除去に使われていました。例えば、上下水道施設の大規模沈砂池や沈殿池の代替、あるいは製鉄所や各種工場、あるいはワイン醸造工場の異物・不純物除去などに使われていました。こういうものに対して、当社としては土(ソイル)を使うので、名前をソイルセパレータとして開発しております。

 これは原理を示したものですが、基本的には遠心分級機です。まず1番として、液体と固体は注入口から接線方向でソイルセパレータに流入してまいります。2番目に、円筒内の内側で液体と固体とは一様な渦流状態になります。
 固形物は、遠心力で飛ばされてこの外の壁面に沿ってゆっくりと、すなわち砂分はゆっくりと下のコレクションチャンバーに貯まります。コレクションチャンバーに堆積した固形物は必要に応じて、定期的または連続的にこの排出口から排出しております。
 ここでは液体と書いていますが、土の場合は、シルト・粘土分は中心のこの負圧帯に生じる上昇流に乗って上から出てまいります。基本的に、こういう90°型とか45°型、22.5°型というものを準備しております。
 基本的に非常に構造が単純なものですから、寸法が小型・軽量で、設置面積が極めて小さいということがいえます。例えば最大能力3000m3/hrの泥水処理を行うタイプで、大体直径が 1.2m、長さが 5.5m程度ですので、非常に小さな大きさで処理ができます。その他、単純に泥水を打ち込むだけですので、動力を必要とせず、設置場所はそれほど選びません。また、密閉構造であり、騒音を発生せず、周囲も汚しません。また、圧力損失も小さく、処理流量幅が大きいといえます。例えば最大クラスですと、処理流量幅は時間当たり泥水量で1800〜2900G/hr程度の範囲を持っています。そういうことで、急激に流量が変化しても分級性能にあまり影響がございません。分級性能は優れているということです。

 これは、分級性能確認実験を行ったときの施設配置図です。作泥槽で泥水を作りましてサンドポンプで打ち込み、ここで渦流を起こしてドレン側から砂分を抽出して、もう一度二次脱水として脱水コンベアを用いています。コンベアベルトの下にバイブレーターをつけて振動を与えながら、もう一度脱水して砂分を出しています。また、泥水は上から出ております。実験を行った原泥のシルト・粘土含有率は7から57%に変化させています。また、体積含泥率も11から37%に変化させています。体積含泥率というのは、例えば 100の泥水の中に30の土が入っていたら含泥率30%という表現になります。この範囲で20ケースについて実施しております。
 これは、時間 450m3/hrの泥水を処理するソイルセパレータの現地実験状況の写真です。泥水は、このようにこのパイプを通って横から打ち込まれて、下から砂分が出まして、上からシルト・粘土分が出てきております。
これは実験結果の一例です。
これが原泥の粒径加積です。横軸に粒径をとりまして、縦軸に通過重量百分率をとっています。大体、細粒分含有率が20%のものをこのときは使っております。
 これが下から出てきた砂分の粒径加積です。細粒分含有率は2%です。上からオーバーフローしてきたシルト・粘土はこのようになって、あまり砂を含んでおりません。
 これは横軸に打ち込んだ泥水の体積含泥率を示して、縦軸に抽出された砂に含まれる砂分含有率を示しています。これは、横軸に打ち込んだ泥水の中に含まれる土の中にあるシルト・粘土含有率を示しています。40%シルト・粘土が入っているということは、60%砂が入っているという意味です。縦軸にドレン部の砂分含有率を示しています。例えば体積含泥率20%以下で打ち込みますと、抽出された砂状のスラリーの中に含まれる砂分は95%、シルト・粘土分は5%程度になるということを示しております。

 このような実験から、現時点で、入り口部でシルト・粘土分含有率が40%以下で、かつ体積含泥率が20%以下であれば、分級によって砂分95%以上の粒度のものを回収可能であるという結果を得ています。シルト・粘土分含有率5%以下の砂ですから、港湾工事の建設材料にはほとんど使えるのではないかと考えております。
 この原理を使いまして、分級・洗浄の適用性確認実験も行っています。
 重金属の存在形態につきましては、先ほど来いろいろ説明されていますので省略します。こういう汚染土について分級・洗浄が有効かどうか確認しました。
 これが実験に用いた汚染土の粒度分布です。シルト・粘土含有量が約15%、ほとんどが砂。ですから、砂を抽出した後の残ったシルト・粘土の量は少なくなりますから最終処分費も安くても済む、というような汚染土を用いています。
これは、横軸に粒径をとり、縦軸に溶出量をとって、粒径毎の溶出量をそれぞれ砒素と全水銀に関して示したものです。太い青線は環境基準値を示しています。各粒径毎それぞれ、砒素、全水銀とも基準値をオーバーしておりました。
 これは、分級・洗浄実験を行ったときの装置です。約2mの長さの非常に細いものですが、1時間当たり泥水処理量は約10m3程度です。

 これは実験施設の全体です。この実験では2つのセパレータを用いています。泥水は、この方向から来まして、ここで渦流を起こし、下のドレン及びオーバーフローから出てきます。オーバーフローしたものをもう一度ここで渦流を起こさせて、下からのアンダーフローとオーバーフローに分けています。これが第1ドレン、これが第2ドレン、これが出口という形で実験結果を整理しています。基本的には、第1セパレータの段階で74μmオーバーとアンダーで分けまして、第2セパレータの段階で44μmアンダーとオーバーに分けようということでこういうタイプの装置を使っていますが、44μmにつきましては若干分級性能が落ちておりました。
 これが分級の結果です。今言いましたように、44μm以下、44〜74mμ、74μm以上に分けて整理しました。第1ドレン下からの土に関してはほとんどが74μm以上でございます。
 このような結果から、第1ドレンでは砂分98.9%、逆に最後の出口では砂分は5%、シルト・粘土95%ということで、74という分級点に関してはよく分級されておりました。
 これはそれぞれの分級結果です。横軸 では74μm、44〜74μm、44μm以下というそれぞれのグループに分けまして、縦軸に砒素および水銀の溶出量を示したものです。それぞれ青いのがもともとの原土の値です。赤が、第1ドレンから出てきた74μm以上の試料からの溶出値です。白っぽいのは、第2ドレンから出てきたものに関するものです。

 この結果から、砂分74μm以上やシルト分44〜74μmでは、原土壌→第1ドレン→第2ドレン、これはゼロに近いですけれども、こういう形で分級・洗浄の工程が進むにつれて溶出量が減少しているといえます。
 以上の結果では、比較的粗い土粒子表面に付着したり、または間隙に沈殿している重金属の化合物を洗浄し、分級している効果が現れているものと考えております。
 以上より、当システムの開発により、汚染土壌の大量分級・浄化の可能性が一応期待されると考えています。ただ、汚染土壌は、含まれる汚染物質の種類、形態、濃度、環境によって様々な特性をすことから必ずトリータビリティ試験を行い、その特性を把握して適用性を確認してから本工法を提案していきたいと考えております。
 これは多少余談になりますが、現在、当社で東京湾沿岸域から発生する汚染土壌を浄化する施設を、例えば千葉県等に設けようという構想を持っています。沿岸域から土運船で汚染土を運搬し、それを揚陸して、そこにバイオ処理プラント、分級・洗浄施設、あるいは熱処理プラント等を設け、多目的の対応をしていこうというようなことも現在検討中です。以上でございます。(拍手)

〔 質疑応答 〕

○質問  分級することによって、重金属はどこへいったのですか。
○岡田  基本的に、原泥の重金属の粒径毎の溶出量を見ていただければ若干ご理解いただけると思うのですが、最初の前田建設さんの説明にもございましたように、細粒分の方にかなり重金属が付着していますので、細粒分を抽出してあげますと、粗粒分の方に残る重金属の割合は少なくなるというふうに考えています。あと、洗浄していますので、その粒子表面からはがれている分もあると考えています。従って、ドイツでもやっておりますけれども、必ず余水処理をきちんとして放流することが必要になると思います。
○質問  細粒分の中の重金属は、そのまま置いておくわけですか。
○岡田  これは、基本的には脱水処理をして最終処分場に持っていき処分費を払って処分するとか、他の処置が可能であればその処置を施すとかいうことになると思います。
○質問  余水はそのまま流してしまうわけですか。
○岡田  余水処理をして流します。
○質問  恐らくソイルセパレータは含水比 200とか 300とか 400とかいう、いわゆるポンプで送れる状態のものだと思いますけれども、逆に含水比の低い方のリミットというのはどれくらいの……例えばスクリューコンベアみたいなもので、ポンプではなくて強制的に送ってしまうような程度の含水比でも可能なのか。
○岡田  基本的に、種々の実験をやっていますと、シルト・粘土分が多い場合に−−含水比と含泥率を同じような意味合いで理解していただければありがたいのですが、含泥率を高くしますと、砂粒子がその泥水の中で浮遊するような状態が起きています。ですから、基本的には沈降分離が原則ですので、シルト・粘土含有率によっても変化しますが、大体20%ぐらいが最大の含泥率と考えております。これは含水比にすればどのくらいでしょうか、1000前後とかそんなオーダーではないかと考えます。
○萱嶋  それでは岡田先生、大変ありがとうございました。

 

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