「北九州エコタウンを見に行く。 循環型産業都市モデル」
高杉晋吾/ダイヤモンド社/1999年11月/2,800円+税

 環境重視のエコタウンのまちづくりの先陣をつとめる北九州エコタウンの紹介が中心となっているが、全国から年間1万人以上の視察見学があるという。なぜ、人々は響灘_北九州市に殺到するのかという著者の素直な疑問が出発点となり、循環型産業の先進国ドイツとの比較を交えながら、北九州という日本産業の歴史性富むフィールドを舞台に循環型産業活動を行っている企業・団体へのヒアリング・視察結果を踏まえ、循環型産業形成へ向けて企業及び個人の今後の進むべき方向性を述べたものである。

目次

第1章「『実証研究センター』臨床型研究主義を貫く大学と現場主義を貫く企業群」
第2章「歴史をリードする『鉄』と北九州市?大量生産型社会からの脱皮と循環型生産システムの展望」
第3章「総合環境コンビナートの企業群?循環型社会とはこういうものだ!」
第4章「歴史が培った北九州産業の豊かな技術とシステム」
第5章「独ルール地方の産業構造転換 エムシャーパーク構想の現場を行く」

 ルール地方の地域社会と産業構造の改革への挑戦「エムシャーパーク構想」の現地レポートが報告されている。行政の取り組みや地域共同体としての企業の姿勢、企業と住民との絆、住民の変革へのノウハウが紹介されており、日本と独との風土の違いを述べた上で最後に日本の行政・企業・住民の今後あるべき姿の提言を行っている。
 抽象理念の羅列や個々ではリサイクル活動を行ってはいるが、全体的には循環システムが成り立っていないリサイクル活動や商品を紹介する書が多いなかで、本書は「循環型社会」について地域社会全体がシステムとして成り立っている事例を挙げ、真の循環型社会のあり方を描いた書である。
 循環型社会においては地域住民=消費者であり、住民参加及び合意形成を経て初めて事業は完遂する。企業は蓄積されてきた技術を地域のために、また住民福祉のために生かすことが企業として今後成り立っていくための必須条件であるということを認識した。
 本書は循環型社会形成のためには、優れた技術や技術者が必要であることは勿論であるが、その土地の歴史性から循環型社会が形成されると説いている。歴史から地域共同体が形成され、社会は形成される。そして人々の歴史との戦いから循環型技術は生まれ、住民参加、合意形成による科学的論争を経てその技術が地域に浸透していくのである。
 今後循環型社会の形成を目指す地域リーダーに是非読んでいただきたい書である。